運動時に息が上がる,息苦しいのはなぜか?

公開日: : 最終更新日:2019/02/10 スポーツ科学


運動開始直後は,実は予測的に呼吸の量が一気に上がります.

 

次に,

運動に伴い呼吸が多くなると,二酸化炭素(CO2)も増え,

その変性した血液を元に戻すため,更に呼吸が増えます.

 

そのメカニズムを以下に詳しく述べたいと思います.

 

そもそも呼吸とは?

呼吸はガス交換

そもそも,

呼吸とは身体の内外にあるガスの交換を言います.

そこで,狭義の意味で外呼吸と内呼吸にも分類できます.

 

外呼吸

外呼吸とは,

口から外気を取り入れて,肺の末端まで送ることをいいます.

 

肺の気管支の終末部,呼吸細気管支・肺胞管・肺胞が関与して,

そこを取り巻く毛細血管と大気から取り入れたガスの交換が行われます.

 

この際のメカニズムは拡散とも言います.

 

ガス分子は濃度の高い方から低い方へ移動します.

 

一般に,酸素分圧は

大気160mmHg

肺胞100mmHg に対し,

肺動脈40mmHg (静脈血)

そこで,酸素吸入後には

肺静脈95mmHg (動脈血) となります.

 

内呼吸

内呼吸とは,

血液中のヘモグロビンに結合した酸素は血流に乗って,

各組織にたどり着き,再び拡散を行われる.

この場合の酸素分圧は

動脈血95mmHg

体組織20-30mmHg

となり,組織を通過した後に

静脈血40mmHg となります.

 

ちなみに,以下に述べている呼吸は広義の意味で

人間が大気から酸素を取り入れる動作を意味しています.

 


セントラルコマンド説

従来の考え

ヒトは運動時に努力する場合に,活動する筋に指令が行きます.

同時に,脳の感覚野にも情報が届き,

運動の努力感に応じて呼吸亢進が誘発されると考えられています.

 

最近の考え

つらいことを考えただけで息が上がる

また,最近では運動を伴わず,

苦しい状況をイメージするだけでも呼吸亢進が誘発されるようです.

大脳から筋への指令が,同時に呼吸中枢に情報が届き,

呼吸が亢進する理論へセントラルコマンド説も変化しつつあります.

 

活発になる脳の部位?

この場合に活発になる脳の部位は,

前頭前皮質,補足運動野,運動前野,小脳,前帯状回皮質,島皮質などと言われています.

いずれも運動を開始したり,学習するために必要不可欠な部位であったり,

情動や記憶にも関連している部位ですね.

 

自身の経験では?

実際に,自験例でも

高齢者の方でも,若い方でも手術後にしばらく動けなくて,

急に運動をするとすぐに疲れてしまったり,様々な訴えをします.

そのような場合には,徐々に簡単な運動から始めることで,

自分はできるんだなと思ってもらうことで,

できる限り脳で感じる疲れを減らして,しっかりとした運動ができるんでしょうね.

スポーツでも似たようなことがあります.

試合開始直後に良いプレイが続かなかったりすると,選手はすぐに疲れてしまいます.

不安や緊張が取れてきたころに良いプレイが出てきます.

そういうところにも影響しているんでしょうね.

 

参考:

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/61913/4/08-1882-1669-125.pdf

 

ホメオスタシスによる調節

呼吸という運動が増えると,

それまで何もなかった状態と変化するために,

以前の状態をできる限り維持しようと,

様々な受容器からの情報が呼吸中枢へ伝わり,呼吸の調節が起こります.

 

化学受容器から呼吸中枢への反射

血液の温度やCO2の増加,水素イオン濃度の減少によって呼吸運動が促進されます.

 

そのセンサーはいくつかあり,

延髄,頸動脈,大動脈に存在します.

 

これらは化学性の調節と言われます.

 

Hering-Breuer reflex

肺にある張力受容器があり,

肺が広がると息を吐くように促進され,

縮むと吸うように促進されます.

 

これは,肺迷走神経反射と言われます.

 

ちなみに,伸展センサーである蛋白質は

Piezo2というそうです.

この蛋白質が欠けている場合には

様々な呼吸器疾患に発展する可能性があるようです.

 

参考:

https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/pr-highlights/11518

 

Bainbridge’s reflex・大動脈神経反射・頚動脈洞神経反射

頸動脈や大動脈には血圧を感知するセンサーもあります.

血圧が上がれば呼吸は抑制され,下がれば促進されます.

 


ここまでのまとめ

 

激しい運動をイメージした場合

よりプレッシャーが高い状況・試合等

→脳へ負荷がかかる

精神的にも呼吸が促進される

 

激しい運動を実際に行った場合

激しい運動

→呼吸が浅く速い

→ガス交換効率低下

→呼吸筋過剰使用

呼吸困難

 


息苦しさの指標は?

Dyspnea Index

呼吸困難感を医学では,

Dyspnea indexという指標で評価することがあります.

 

計算式?

計算式は VE/MVV です.

VEとは?MVVとは? 何でしょうか?

 

VE:分時換気量(minute ventilation)

MVV:最大換気量(maximum voluntary ventilation; MVV)

 

計算式を用いて息苦しさを考えると?

つまり,

体力が無い,運動の強度が高いことで

呼吸の回数が増える=VEが上がる

 

あるいは

気道が閉塞する,胸が硬くて,

最大努力の換気が下がる=MVVが下がる

 

また,

この両方が生じることでVE/MVVが上がります

 

ちなみに,

吸気筋には頚部・肩の筋も補助筋となります.

呼気筋の補助筋は腹筋となります.

そう考えると

肩こりの方,腰痛がある方,上半身の手術をした方は

運動時にVEが急激に上がりやすく,

呼吸困難感が高くなるかもしれませんね.

 


運動時の呼吸困難感の評価

息苦しさの自覚的スコアによる評価

Borg scale

呼吸困難感を評価するには,

Borg scaleを用いることがあります.

上記の6から20までの数字がBorg scaleです.

これは動いている時であったり,運動を止めた直後に質問するものです.

実際には,歩行テストや自転車のテストで使用することがありますが,

実際のスポーツ動作中に使用することは珍しいですね.

20段階のBorg Scaleでは,

簡易的に返答された数字の10倍を脈拍数に相当すると言われています.

引用:

Patrawut Intarakamhang etc.(2013) The Assessment of Dyspnea during the Vigorous Intensity Exercise by Three Dyspnea Rating Scales in Inactive Medical Personnel.Glob J Health Sci. 5(6): 19–29.

 


環境の影響

 

冬季では,空気が乾燥し,冷気もあり

気道が収縮しやすい状況にあります.

そのため,より呼吸困難感が増えるかもしれません.

 


呼吸困難感を改善する方法

大きく3つあります.

①肺の機能を高める,②筋の機能を高める,そして➂吸気の機能を高める,の3つです.

 

①肺の機能を高める

速く浅い呼吸をゆっくりとした深呼吸に変え,換気を高めます

また,急激に生じる気道閉塞を弱めるため,口をすぼめて呼吸します.

 

実際の試合中でもこの方法が活用できます.

つまり,ラグビーやサッカーの試合中.

ボールの近くにいない場合には
集中しながら,どれだけ息を整えるかは重要です.

常に,動く必要のあるバスケットボールやハンドボールは難しいですね.

しかしながら,交代が複数回可能であるため,交代する時間帯を利用して行うことができます.

 

また,

肺の機能を弱める胸の硬さがある場合には無のストレッチングを行います.

 

 

 

②筋の機能を高める

有酸素性代謝能力が低い場合には,運動に伴い嫌気性代謝が促進されやすくなります.

これでは嫌気性代謝産物であるCO2や乳酸が増大し,

化学的な調節によって,VE:分時換気量が増大し,呼吸困難感が増大します.

そのため有酸素能力を強化することが重要です.

 

方法としては,

有酸素性代謝能力を増大する

全身持久系トレーニングや嫌気性代謝産物を取り込む能力を高めるため筋力トレーニングがあります.

 

推奨される有酸素性持久力トレーニング

色々と方法がありますが,教科書的には

初心者の方は,ジョギングを週2回,30分を目標に

強度としては「少し息苦しい」,Borg Scale 13程度で行うと良いでしょう.

 

*以下は,専門的なトレーニング別の推奨です

・LSD(Long Slow Distance):
週1-2回,試合・レースと同等の距離,70%VO2max以下

・ベーステンポ:
週1-2回,20-30分,嫌気性代謝閾値(試合時の強度)

・インターバル:
週1-2回,連続運動時間3-5分,運動-休息比1:1,VO2max程度

・レペティション:
週1回,連続運動時間30-90秒,運動-休息比1:5,VO2max以上

・ファルトレク:
週1回,20-60分以下,70%VO2max~嫌気性代謝閾値の間

 

推奨される筋力トレーニング:

67%1RM以下の運動強度,12回以上の反復回数,2-3セット

 

➂吸気の機能を高める

吸気筋の中で最大の筋は横隔膜.

病院では

呼吸器疾患の患者の腹部にゴムを巻き付けたり,

重りを乗せたりして負荷をかけたり,

特定の機械を口に嵌めて呼吸したりします.

 

スポーツ用は無いだろうと思ったのですが,ありましたね.

1日あたり数分行うだけでもトレーニング効果があるようです.


少し長くなりましたが,

また,お気軽にご質問ください!

スポンサードリンク



関連記事

運動の学習効率を上げるコツ

パフォーマンスを高めるコーチの言葉 ある動作を習得させるためには, その運動を学習効率を上げ

記事を読む

運動を調整するメカニズム:Efference copy

例えば,持ち上げようと思ったら,意外に重たくて,力を入れてしまいますよね.  

記事を読む

日本人はいつも眠い?パフォーマンスに影響する睡眠の質

私の場合, 数年前から横になれば直ぐに眠くなってしまって 原因は就寝前のパソコンだと思っています

記事を読む

アイシングに科学的根拠はあるか?

とりあえずアイシング アイシングすると何か良いのか,もう一度考える 応急処置:R

記事を読む

ケガで動けない時期に息を切らそう

大会数か月前にケガがあり,運動できない時期があり, コンディション不足ということで, モ

記事を読む

インソールをお勧めする理由

メリット 習うより慣れろ 一番の理由としては, 足部の形に問題がある場合には,良い姿勢での

記事を読む

「リカバリー」:練習・試合後の疲労回復におけるゴールデンスタンダード

  皆さん,熱中症対策や水分摂取にお気をづけ下さい 今回は,運動後の疲労回復に

記事を読む

有酸素性能力の強化

アスリートにおける有酸素性能力を強化するには,   大別すると、 最

記事を読む

どうしても,取れない疲れもある.脳の疲労.

最新の研究で,解明されつつあるところです   「疲労が脳で起こる」という話です

記事を読む

上半身の動的な安定性

上半身の機能といいますと 特にアスリートの場合には 筋力の要素以外で中々,調べることはあ

記事を読む

スポンサードリンク



Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク



腱障害に対するリハビリテーション(専門家向け)

以下, アスリートで良く起こりうる腱障害を対象に, 治療法を含めた

非ステロイド性抗炎症薬は急性の筋損傷に効果的か?

たま~に頭痛があります. いやいやご心配なく,パソコンの前に座り

運動を調整するメカニズム:Efference copy

例えば,持ち上げようと思ったら,意外に重たくて,力を入れてしまいますよ

運動の学習効率を上げるコツ

パフォーマンスを高めるコーチの言葉 ある動作を習得させるためには,

アスリートの上半身の機能の特性

例えば,テニス選手の場合に限定していうと, 非利き手と比べて 利き

→もっと見る

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。
PAGE TOP ↑