非ステロイド性抗炎症薬は急性の筋損傷に効果的か?

公開日: : 最終更新日:2019/09/18 スポーツ科学, 医学

たま~に頭痛があります.

いやいやご心配なく,パソコンの前に座りすぎですね.

近年,多くの方がデスクワークを強いられ,同じような症状があるかもしれません.

そんなときは市販の「ロキソニン」のような鎮痛薬を服用されることがよくあります.

すなわち,ステロイドを使用してない,鎮痛薬.

非ステロイド性抗炎症薬.

英語でNonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs,頭文字をとってNSAIDs

どこの整形外科に行っても,鎮痛薬としていただけるメジャーな薬です.

 

非ステロイド性抗炎症薬とは?

ところで.

非ステロイド性抗炎症薬は炎症物質を減らします(Rao et al. 2010).

その結果,鎮痛や解熱という効果があります.

 

同時に副作用もありまして,胃腸への負担も大きいとされています.

胃腸薬とともに処方されることもありますね.

特に,動物では強く影響しすぎて非常に危険とされています.

 

 

急性の筋損傷に対する非ステロイド性抗炎症薬の効果

面白い文献がありました.

急性の筋損傷の後に,この薬をつかうと

筋力低下や筋痛だけでなく,筋の損傷を示す血液の指標も減るようです(Morelli et al.2018)

つまり,

ラグビーなどの激しいコンタクトスポーツで,

連戦つづきで,かつ,痛みを伴う場合には短期間であれば良好な効果があり.

即座に高いパフォーマンスを示す必要があるならば

使う効果があるということになります.

 

炎症を抑えることは良いことばかりか?

一方で,

炎症反応を抑制することから注意が必要です.

炎症とは,例えばキズが出来てしまったときに起こる治癒過程の最初の段階です.

痛みの物質を運んできますので,痛みを感じます.ややじわーんとする痛みです.

そして,痛みとともに,治るための多くの物質ももたらします.

つまり,傷口が治るには炎症は不可欠です.

 

ですので,

やや長期的な視野で使用の是非を考えると

薬をつかってしまうと

炎症反応という治癒に必要な期間が遅れるため,

結果的に

完全治癒の時間は長くかかってしまうということになります.

 

アイシングも炎症を抑えるのか?

アイシングは英語でIcingともいい,

ケガをしたらまず「冷やす」ためのアイシングは世界的にも定番です.

そして,ケガをした際のアイシングを含めた処置をRICEとも言います.

Rest(安静),Icing(冷却),Compression(圧迫),Elevation(挙上)

これらの頭文字をとってRICEです.

そもそも,1978年にMirkin博士がRICEを提唱しました
(下図:1978年に出版した図書).

そのおかげで,RICEは近年でも当たり前のように行われています.

しかしながら,最近ではその考え方も少し変わってきているようです.

2014年頃にMirkin博士は自身のSNS(下図:2014年の記事)で

なんと!?

RICEの効果を半ば否定しています.

その理由の一つにアイシングが炎症反応を抑制することを挙げています.
http://www.drmirkin.com/fitness/why-ice-delays-recovery.html

 

 

アイスバスも炎症を抑えるのか?

たまに,ニュースでラグビー選手が練習や試合後に氷の入った水風呂に入る映像みませんか?

これがアイスバスといいます.

そもそも,運動によってもたらされる筋損傷の回復をアイスバスで早めるというもので

コンタクトスポーツでは当たり前のように行われています.

 

そんな中,アイスバスなどの冷却の効果に関する調査(Conen et al. 2017)が報告されています.

その効果を主観的客観的と分けています.

主観的とは,選手の気分や思考に大きく影響を受けます.

一方,

客観的とは,目に見えない効果を数字で表したものです.

どちらも大事なんですが,科学的な効果があるかどうかは

客観的に効果があった方が重要と考えられています.

まず主観的効果として,

遅発性筋痛としての痛みや主観的疲労度が

アイスバスを行った方が科学的に良い効果があったと報告されています.

しかし,

客観的効果として

血中乳酸や疲労後の筋出力に特に影響を与えなかったと報告しています.

 

つまり,アイスバスはアイシング同様に客観的効果は科学的には認めておらず

一方で主観的な効果はあるようです.

これをどう考えたらいいでしょうか?

 

アイスバスをケガの回復を早めるものと捉えると

そこはちょっと違うのかもしれません.

なぜなら,ケガの回復には炎症過程を踏まなければならないので,

そこにアイスバスは影響するとは科学的に認めてられていません.

しかし,疲労回復という観点からならどうでしょうか?

実際に,痛みや疲労度の改善が認められています.

元々,痛みも疲労も同様なんですが,結構,気分が影響しています.

例えば,疲労に関しては,脱水したり,暑さを感じたりすると

なぜか疲れちゃいます.言葉を変えると熱中症ともいいます.

ボクサーが減量のためにサウナに入って脱水したりすると,頭がボーとしてきたりもします.

そのような状態に対して,アイスバスというのは身体の温度・脳の温度を下げて,

心理的な疲労を改善してくれるのかもしれません.

(脳の疲労,つまり,「中枢性疲労」に関する記事はこちら↓です)

どうしても,取れない疲れもある.脳の疲労.

 

結局,非ステロイド性抗炎症薬はどのように扱うべきか?

アイシングやアイスバスにも話がぶれましたので

もう一度まとめると

例えば,練習や試合が連戦続いていて,どうしても連戦出場しないといけない場合に

薬によって痛みを抑えることができます.

それでパフォーマンスを高めることができます.

学生時代最後の大会,そんな大事な試合の場合には致し方ないかもしれませんね

いずれにしても,ケガの治りを早めるものではない!

という理解が大事ですね.

 

薬の扱いに関するご注意

最後にご注意ですが

薬の処方に関しては,専門家の判断が必要です.

公式戦等ではドーピングへの対応が必要で,

トップレベルのスポーツではそれで選手生命が絶たれる場合もあります.

日本で病院に行かれる場合には,日本スポーツ協会ドクターなど,専門的な資格を持っている

医師の受診などが望ましいと思います.

よく相談の上の判断をお願いします.

 

(参考)

Morelli KM
Effect of NSAIDs on Recovery From Acute Skeletal Muscle Injury: A Systematic Review and Meta-analysis.
Am J Sports Med. 2018; 46(1):224-233.

Praveen P. N. Rao
Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs (NSAIDs): Progress in Small Molecule Drug Development.
Pharmaceuticals 2010;  3(5), 1530-1549.

Coen C. W. G. Bongers,
Cooling interventions for athletes: An overview of effectiveness, physiological mechanisms, and practical considerations.
Temperature (Austin). 2017; 4(1): 60–78.

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