腱障害に対するリハビリテーション

以下は,アスリートで良く起こりうる腱障害を対象に,治療法を含めた簡単なまとめです.

非常に専門的な内容ですがご紹介させて頂きます.

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腱の構成

  • 細胞:腱芽細胞(tenoblast)・腱細胞(tenocyte)
  • 細胞外基質(extracellular matrix: ECM):コラーゲン(膠原線維,乾重量65~75%)・エラスチン(弾性線維,乾重量2%)・プロテオグリカン (糖蛋白質の一種,コンドロイチン硫等,湿重量60-70% *水を含む)・糖蛋白質(細胞接着分子,etc)

 

腱障害の病態

  • 動物実験:腱組織の肥厚、炎症細胞の腱組織内への浸潤、腱および周囲組織の毛細血管数の増加、パラテノンの線維化
  • ヒト手術所見:炎症性細胞の浸潤を伴わず、粘性あるいは硝子変性、フィブリノイド壊死、微小血管の増生、線維芽細胞の配列の乱れ

 

腱障害を誘発する組織低酸素状態

・腱血流低下
・組織における酸素欠乏,または代謝・栄養供給能低下
*これらが腱の退行性変化の要因

 

腱障害に対する治療 いずれも治療効果があるとされるが,報告された調査はシステマティックレビューにおいて科学的研究としての質は低く,更なる研究が待たれています.

Extracorporeal shock wave therapy

効果:
・成長/増殖因子の促通
・下行性疼痛抑制系の促通

 

【文献】

l Clinical application of shock wave therapy in musculoskeletal disorders: part II related to myofascial and nerve apparatus. J Biol Regul Homeost Agents. 2015 Oct-Dec;29(4):771-85.

l Clinical application of shock wave therapy (SWT) in musculoskeletal disorders. Eur J Phys Rehabil Med. 2014 Apr;50(2):217-30. Epub 2014 Mar 26.

l 体外衝撃波照射によるラット神経筋接合部の破壊と再生.博士論文(千葉大学),2011.

 

Platelet-rich plasma

効果:
・成長因子による組織修復
・白血球(メタロプロテアーゼ・活性酸素の放出)による炎症過程を誘発し,コラーゲン合成等を促す.

 

【文献】

l The clinical impact of platelet-rich plasma on tendinopathy compared to placebo or dry needling injections: A meta-analysis. Phys Ther Sport. 2016 Jan;17:87-94. doi: 10.1016/j.ptsp.2015.06.003. Epub 2015 Jun 18.

l Non-surgical treatment of lateral epicondylitis: a systematic review of randomized controlled trials. Hand (N Y). 2014 Dec;9(4):419-46. doi: 10.1007/s11552-014-9642-x.

 

Eccentric overload training(遠心性負荷トレーニング)

効果:
・運動負荷に伴う腱のリモデリング反応促通
・筋伸張に伴う線維芽細胞活動の亢進
・運動負荷に伴う腱障害に付随する血管新生の消失
・神経筋反応促通による中枢性適応,疼痛抑制

*注意点としては,急性期では良好な効果は出せません.急性期であれば,等尺性負荷運動が効果的と言われています.また,疼痛出現が無いように行うことがポイントになります.最近では遠心性に限らず,高負荷トレーニングが効果的と言われています.

 

【文献】

l Eccentric overload training in patients with chronic Achilles tendinopathy: a systematic review. Br J Sports Med. 2007 Jun;41(6):e3. Epub 2006 Oct 11.

l The evolution of eccentric training as treatment for patellar tendinopathy (jumper’s knee): a critical review of exercise programmes. Br J Sports Med. 2007 Apr;41(4):217-23. Epub 2007 Jan 29.

 

Instrument Assisted Soft Tissue Mobilization

効果:
・成長因子の放出
・線維芽細胞活動の亢進

*こちらでも紹介しています.
http://conditioning-mito.info/175.html

【文献】

l Rat tendon morphologic and functional changes resulting from soft tissue mobilization. Med Sci Sports Exerc. 1997 Mar;29(3):313-9.

l Fibroblast responses to variation in soft tissue mobilization pressure. Med Sci Sports Exerc. 1999 Apr;31(4):531-5.

 

おまけ

Instrument Assisted Soft Tissue Mobilizationを用いた際の徒手的感覚に関する考察

治療時に瘢痕組織でなくとも,皮膚浅層においても明らかな「凸凹の引っかかり」が存在します.この点に関して,科学雑誌における記載はあまりありません.他方で,皮膚の「凸凹」に関してはorange peelとも称されるセルライトが良く知られてます.非医学用語ではありますが,その原因として皮下の脈管構造の劣化や慢性炎症過程(マクロファージ・リンパ球の皮下隔膜への侵入を伴う)とされ,腱障害発生過程と類似した説明が多い印象があります.

しかしながら,腱障害においてもセルライト様の物質が発生するとの報告は見当たりません.近年の報告で,ラット関節拘縮モデルにおいて脂肪細胞が萎縮・減少と線維化を示唆する所見が報告されています.そのため,今後更なる研究に期待し,治療時における根拠として採用していきたいと思います.

 

【文献】

l So-called cellulite: an invented disease. J Dermatol Surg Oncol. 1978 Mar;4(3):221-9.

l ラット膝関節屈曲拘縮における大腿部筋間脂肪織の病理組織学的変化.理学療法学 35(Supplement_2), 354.

非ステロイド性抗炎症薬は急性の筋損傷の改善や障害に効果的?

たまに頭痛があります.

ご心配なく,パソコンのやりすぎですね.

そんなときは市販の「ロキソニン」を服用します.

これも一種の非ステロイド性抗炎症薬.

整形外科に行けば,鎮痛薬としていただけるメジャーな薬です.

 

非ステロイド性抗炎症薬は炎症物質を減らします.

その結果,鎮痛や解熱という効果があります.

同時に副作用もありて,胃腸への負担も大きいとされています.

特に,動物では強く影響しすぎて非常に危険とされています.

 

そんなことで,

ただのごまかしているだけと思いこんで,良いイメージはありませんでした.

勿論,頭痛はおかげ様で飲むと治りますから効果は実感していますし,

初期症状に対して,神経質になる場合もありますから

心理的な鎮痛効果もあると思うのですが,

 

面白い文献がありました.

急性の筋損傷の後に,この薬をつかうと

筋力低下や筋痛だけでなく,筋の損傷を示す血液の指標も減るようです.

つまり,

ラグビーなどの激しいコンタクトスポーツで,かつ痛みを伴う場合には

使う効果があるということになります.

 

勿論,ご存知だと思うのですが

薬の処方に関しては,専門家の判断が必要ですし,

公式戦等ではドーピングへの対応が必要ですから,

専門家とよく相談の上の判断をお願いします.

 

(参考)

Effect of NSAIDs on Recovery From Acute Skeletal Muscle Injury: A Systematic Review and Meta-analysis

運動を調整するメカニズム:Efference copy

例えば,持ち上げようと思ったら,意外に重たくて,力を入れてしまいますよね.

 

幼い子であれば難しいので,落としてしまったり,力を入れ過ぎてどこかに飛んでいってしまうかもしれません.

ある程度成長している子であれば,あたふたしているうちに丁度良い力の入れ方を見つけて,

安定して持ち上げることができます.

別に,どれぐらい力を入れればよいかゆっくり考えている訳ではないのにです.

 

我々は,運動をしている時に,その運動している感覚を脳の中に自動的にインプットして

自動的に運動をコントロールしているようです.

 

その運動している感覚が脳の方へ伝わる,

これをEfference copy,遠心性コピーというようです.

そして,上手く物が持ち上がるという予測と,あたふたしている結果を比較しているようです.

 

 
Memo

The role of efference copy in striatal learning.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24566242

運動の学習効率を上げるコツ

パフォーマンスを高めるコーチの言葉

ある動作を習得させるためには,

その運動を学習効率を上げる必要があります.

 

例えば,走る練習をしている際に,コーチが選手に何と声かけするかです.

それは科学的には外在的フィードバックといって,

言葉をもってコーチが選手の能力を最大限に引き延ばすのです.

 

パフォーマンスを高める外的焦点化

そのなかでも特に外的焦点化は負の影響が少ないとされ,

効果的かもしれません.

外的焦点化とは身体の外側にある指標を目標物としてフィードバックする手法です.

 

例えば,「しっかり足に力を込めて蹴ってみろ」というよりは

「片方の膝を自分のヘソの前まで素早く持ってこい」という言う方が良いかもしれません.

片方の膝が前に,上に持ち上がるには,もう一方の脚でしっかりと地面を蹴らなければならないからです.

内的焦点化も重要

しかしながら,

もししっかりと地面を蹴れない選手であれば,
足の筋肉がどこにあって,どういう風に力を入れればよいか?

指導した方がパフォーマンスが良いともいいます.

そのため

内的焦点化は新たな運動を学習する初期段階では有効のようです.

 

 

(参考)

Effects of external focus of attention on balance: a short review.

アスリートの上半身の機能の特性

例えば,テニス選手の場合に限定していうと,
非利き手と比べて
利き手の肩の内旋可動域や全体の可動域は減り,
外旋可動域は増大するとされています.

*ちなみに外旋とは,ラケットを持ち上げたときのように手の甲が背中側を向くような動作です.
逆に,内旋はラケットを振り下ろした際に手のひらが地面を向くような動作です.

これは野球選手も同様に報告されています.
同じようなスポーツでは,似たような特徴があるんでしょうね.
例えば,バレーボールもバドミントンも同様かもしれません.

また,
過去の肩の障害と肩の筋力は関連するとされています.
特に外旋筋力・外旋/内旋筋力は過去の障害の有無によって,影響され
障害があれば勿論,筋力も低下しやすいようです.

しかしながら,
筋力がサーブのスピードとは関連しないと言われています.
これは面白いですね.
肩の筋力のみがパフォーマンスに影響する訳ではなく
肩以外の要素がパフォーマンスの良し悪しに関わるということですね.

このことからいえることは
細かく筋力を鍛えるこてとは,後遺症が残ってる居る場合に有効です.
なので鍛えましょう.
ケガの予防と考えましょう.

更にパフォーマンスを鍛えたい場合には,
肩以外に別の部分も鍛えましょう.

 

(参考) A COMPARATIVE STUDY OF PASSIVE SHOULDER ROTATION RANGE OF MOTION, ISOMETRIC ROTATION STRENGTH AND SERVE SPEED BETWEEN ELITE TENNIS PLAYERS WITH AND WITHOUT HISTORY OF SHOULDER PAIN

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